【映画メモ】映画ドラえもん のび太の新恐竜

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8月9日に「映画ドラえもん のび太の新恐竜」を見てきた。

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発表されたときは正直「また恐竜リメイクかよ!」と思った。だから期待していなかった。蓋を開けてみれば、初代「恐竜」や「恐竜2006」を下敷きにしたパラレルワールドを描いたかのような作品であった。リメイクというより今の時代に合わせたリ・イマジネーションと言ったところか。

 


以下感想や考えたことを書いていく。ネタバレあり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新恐竜」というタイトルだが、最初の大まかな流れは変わっていない。のび太ジャイアンスネ夫を見返すために、ナウマン象のウンコ…ではなく恐竜のタマゴの化石を発見する。タイムふろしきでタマゴを孵化させて、ドラえもんにあたたかい目で見守られながら恐竜を育てていくところは「恐竜」「恐竜2006」と同じである。しかし今回生まれたのは双子の羽毛恐竜だった。ここのまるでマンガみたいな大きなタマゴなのは旧作リスペクトだと思うが「いやあんなでかいわけないだろ」と突っ込みたくてウズウズしていた。

 

実はピー助のような首長竜は、“恐竜”に分類される動物とはまた違うとされている。この話をすると長くなるが、ピー助よりもワニや鳥の方が恐竜に近しい生き物であるとされている。さらに言うとピー助のような首長竜は、2011年の時点で胎生の可能性を示唆する研究が発表されている。

首長竜は胎生だった? 化石から胎児 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

 

また「恐竜2006」に登場したスピノサウルスも、当時と比べて姿形が随分と変わってしまった。

スピノサウルス新復元図!!! - 宵闇林檎〜中身ゆるゆるブログ〜

 

恐竜やその他の古生物は、今後の研究で姿形や生態が変容する可能性がある。それもあって、今回のゲストキャラクターはオリジナルの恐竜にしたのかなとも考えられる。

 

僕は、恐竜ファンとしては、恐竜を題材にした映像作品を作る際には、最新の研究を反映させてほしいと考えている。一方で、どうせ恐竜が生きて動いている姿は今現在見ることができないのだから、恐竜が動いている映像さえ見られれば多少の時代考証のミスや大袈裟な演出は仕方ないとも考えている。難しいところだ。

 

今回はのび太スネ夫が「○○サウルスだ!」って種類を特定したがるけど、ドラえもんが「その仲間の恐竜だね」って訂正して、パンフレットをみると正確な種類は違う方が多いっていう…。それはそれで逆によかったけどね。ゲストキャラクターのキューとミューなんかは未記載の恐竜で、現代はおろか22世紀においても名前がないわけだから。恐竜が実在していたら学名なんか関係ない。また今作は時代考証はともかくとして地域の考証は細かくされている気がする。登場する恐竜はだいたいがアジアで産出された恐竜である。

 

のび太はどうしても鳴き声から名前をつけてしまうらしい。子育てパートは犬猫や人間なんかと変わらないなーと思った。人間の子供だって好き嫌いはあるし、急に食べたら嘔吐したりもするだろう。双子の恐竜たちがのび太の部屋を暴れ回る様子は「おおかみこどもの雨と雪」に通ずるところがあった。本作もケモケモ分も多めでそちらが好きな人も是非。恐竜の博士もあんなこと聞かれても困るだろ。あと現代パートでさりげなく小鳥が映るシーンが多かったような気がする。

 

 

本作には藤子先生が恐竜と同じくらい好きな、ミニチュアやジオラマの要素も含まれている。それにしてもジュラ紀から白亜紀まで1億年近く放置されてもなお天候調節の機能が壊れていないから22世紀の道具の耐久性ってすごいな。

 

 

今回は前作と違いタイムマシンは故障していない。だからいつでも現代に帰ることができるが、今回はキューとミューのために白亜紀に残り続ける。きび太郎印のももだんごは品切れだったが、「ともチョコ」なる道具でタルボサウルスとシノケラトプスも味方に加えていて、向かうところ敵なし!と言ったところだったが、今作の最大の敵は天災と歴史だった。恐竜絶滅の原因となる隕石を前にしたのび太は歴史改変をしようとしてしまう。そこでタイムパトロールに拘束されてしまった。さすがにすべての恐竜を絶滅から救うというわけにはいかない。

 

今回パンフレットに載っている未来の道具の中で「チェックカード」だけドラえもんの出した道具ではない。これの元ネタは藤子F不二雄の別の作品で登場するもので、ある人物や動物にかざすと、対象が歴史上重大な偉業を成し遂げる場合は光って知らせてくれるというものだ。本来は時空犯罪者を取り締まったりする際に現地(時?)民の協力を得たい時などに使用し、無反応なら協力してもらったり他の道具で一方的に利用したりするという使い方をする。

 

この道具でのび太とキューを調べた結果激しく反応したため、タイムパトロール・ジルはその瞬間から傍観者となった。本作でタイムパトロールのび太たちの終盤の行動を制限しない理由であり、さらに今までの映画などでのび太たちがタイムパトロールに見逃してもらっていた理由づけにもなっていると思う。しかしそもそも考えればドラえもんセワシの祖先の過去を変える=過去改変を目的として過去に送り込まれた存在であり、21世紀においてはいわばイレギュラーな存在である。そのイレギュラーが無ければ恐竜が鳥類に進化しないとはいったいどういうことなのか…?この辺りもタイムパラドックスとして興味深い。

 

「私たちは進化の瞬間を目の当たりにしているんだ!」ってところでキューの翼が伸びたような演出があったけど進化ってそうじゃないだろう、と。でもわかりやすく“演出”するならあんな感じになるのかなって思った。あの辺りもちょっとわかりにくいけど、他の個体は滑空しているけどキューだけは羽ばたきを獲得したってことなんだよね。

 

そして恐竜たちをドラえもんの道具由来の空間に避難させるというのは「のび太と竜の騎士」に似たようなシーンがある。

 

そしてまさかのレジェンド“あの首長竜”登場。エンドロールにはっきりと名前が書かれているのは大きなマイナスポイントだが。匂わせくらいでよかったのになんではっきり書いてしまったのか。のび太が溺れる→幻影を見る→待てよ?このボールの飛ばし方は…?この長い首は?!?!?!ま、まさか…、くらいでいいのよ。

僕が「恐竜2006」と「新恐竜」はパラレルワールドではないかとほぼ確信したシーンである。あの個体は化石にならずに白亜紀で孵化したが別の世界線での記憶が残っていたのだろう。感動的なシーンだ。のび太が認識したのかはわからないが、彼は間違いなくのび太を認識しただろう。

 


来年はリトルな宇宙戦争のリメイクだと思う。