【映画メモ】竜とそばかすの姫【ネタバレ】

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7月18日に『竜とそばかすの姫』を見てきた。

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未来のミライ』のときはブログにまとめきれなかったので今回は無理矢理にでもまとめてやろうと思っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

以下ネタバレあり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


今回は『サマーウォーズ』とおなじくネットの世界が舞台ということで『サマーウォーズ』の焼き直しみたいな話になるのかと思っていたが、そんなことはなかった。まあ同じ下敷きだからと言って同じ話になるとは限らないか。元ネタのひとつなのかもしれないが。こう、『美女と野獣』や『サマーウォーズ』を下敷きにしながらも、『君の名は』『search/サーチ』あたりを思い出すような内容だった。

ネットコミュニティ「U」の世界と現実の世界を行き来しながら物語は進んでいく。ミュージカルのような場面が長く続き、話が転がり始めるのが遅い気がした。たしかに映像としては美麗なのだが、もっと他にやらなきゃいけない話があるだろうと感じた。何回か見直せば察することも出来ると思うが、個人的には映画というのは観賞後にスッキリとした気持ちになりたい。それに何回か見返さなければ訳がわからない話というのは好きではない。今回はそういう複雑な話というわけではないが、細かいところが少しわかりづらいと感じた。

例えば、合唱団のおばちゃん5人組みたいな人たちがいて、なぜすずとおばちゃん達が一緒に合宿の練習をしているのか最初は意味がわからなかった。すずの母親は、すずが幼い頃に、増水した川の中洲に取り残された他人の子供を助けて命を落としている(この子供が竜なのかと思ったが違った)。つまりこのおばちゃん達はすずの母親と一緒に合唱をしていた人たちなのだ、と気づいたのは結構終盤になってからだった。そんなん最初に説明してくれればいいのに。

サマーウォーズ』の時も思ったけど、ネットコミュニティ=アバターが自由に動き回れるサイバースペース、みたいなイメージは一体なんなんだろう。映像化するときのわかりやすさ重視なのだろうか。それに今回は、耳にBluetoothイヤホンみたいなやつをつけただけで視覚までカバーするシステムが使われている。それって怖くない?どんな仕組みなの?せめてVRゴーグルくらいつければいいのに…と思っていたけど、多分これも映像の都合で、リアル世界のキャラたちを映すときに顔が隠れないように、耳だけにしたのだろう。個人的に「映像化の都合」「作劇上の都合」みたいな考察は、あまり好きではない。だから僕が読み取れていない理由が何かあるに違いない。だから案外耳だけで視覚や身体感覚さえもカバーできるデバイスは本当にあるのかもしれない。

主人公のすずはクソ田舎に住んでいる高校生だ。どのくらいクソ田舎かというと、高校に行くために電車とバスを数回(2〜3回?)乗り継いでいる描写がある。最初のバス停までも結構歩いていたような気がする。 しかもそのバスの中には広告が一切無く、「当路線は9月末で廃線になります」の張り紙がしてある。クソ田舎に住んでいる割に祖父母が全く出てこないのが違和感があった。高校で、スクールカーストが離れた登場人物たちが出てくるが、おそらくみんな中学生くらいからの知り合いなのだ。途中吹奏楽部のルカちゃんがすずの家を訪れる場面があるがそんな知らないやつの家にいきなり行くわけないと思う。

すずの幼馴染で、高校ではバスケ部員で大人気の忍くん。僕はもしかしたら彼が竜の正体ではないかと考えて「佐藤健の声なら聴けばわかる!」と鑑賞時に耳をそばだてていたこともあった。しかし竜の正体は彼ではない。すずと忍は高校生になってからもたまに二人きりで会話をしていたのだが、ある日忍は公衆の面前ですずと話してしまう。それによりグループラインみたいなやつが炎上するのだが、本人が弁解するとみんなわかってくれるのは物分かりが良すぎないか。

すずの親友であるというヒロちゃんは、すずを「U」の世界に案内する。おそらく作中でいちばん表情がころころ変わるチャーミングなキャラクターで、すずのアバター「ベル」を「U」1番の歌姫に仕立て上げた名プロデューサーだ。メガネをかけた天才ハカー風味の女子というのがとてもアニメ的だ。ヒロちゃん自らは「U」では魔女っ子アニメのマスコットキャラみたいなアバターにしていて、ベルに付き添う裏方に徹している。

しかしどれだけ普及したネットコミュニティなら、事件が起こった翌日にクソ田舎の学校のクラスがその話題で持ちきりになるというのだろうか。まあそこはそれだけ「U」の影響力が絶大なのだということにしておこう。いつまでも世界観について突っ込んでいても仕方あるまい。「ベル」はU内で絶大な人気とカリスマを誇る。ある日U内でベルのライブを開くことになった。ライブ会場の電脳空間をぶち破り「竜」というアバターがベルの前に現れる。竜はUの中で道場破りのような行為を繰り返しているらしく自警団みたいな奴らに追われている。自警団は相当な数がいるが竜は一騎当千の強さを誇り自警団のリーダーである「ジャスティン」以外は相手にならない。竜はベルのライブを台無しにして逃げ去ってしまう。こうして出会った2人は次第に惹かれあっていく。このライブが始まるまでが長い気がする。この後なんやかんやあって竜の正体を探し出す。その辺りまでは、よくある話だと思うので、特に文句はない。

竜の正体が、いままでの伏線を全部ほっぽり出していきなり出てきた(画面にチラッとは映っている)知らない14歳の男の子なのも、まあいい。なんで???とは思ったけど。途中で出てきた数人の「竜の正体候補」たちもあまり意味がなかったな。男の子の居所を特定するくだりは総力戦なのでまあよかったと思う。ただこの辺りからネットがあまり関係なくなっていく。

最高に頭おかしいのは、竜の正体の男の子(恵くん)の家まで、すずが一人で乗り込むところ。すず達が住んでいるのは高知県で、相手がいるのは東京だ。なんで?誰かついてこいよ!しかも相手はDVの被害者だぞ!すずも殴られるかもしれないのに。さらにいうと恵くんの家の場所は「だいたいこの辺り」というのがわかっているだけである。東京の建物の密集ぶりを舐めないでほしい。ヒロちゃんも忍もカミシンもルカちゃんも合唱団のおばちゃん達もみんな子供が殴られるのみていただろ?!父さんも二つ返事で了承すんなや!DV野郎がすずの頬に傷をつけたときは「ほーら言わんこっちゃない」ってなったからねマジで。

しかもなんかその後恵くんや彼の弟がどうなったのか、DV野郎が逮捕されたのか、まったく描かれない。せめて新聞記事とかネットニュースをちらっと映すだけでだいぶ変わるのに。彼らのその後についてはなんにもない。ただすずが頬に絆創膏を貼っただけで高知に帰ってきて、忍とは男女の仲になり父親とも和解しました。すずは人間として一歩進みました。おわり。みたいな感じだった。なんかSFをやりたいのか人間ドラマをやりたいのか中途半端な感じで、もやもやだけが残った。オチさえしっかりしていれば…。しかし「DVを通報しても意味がない」みたいな内容にして、細田監督は行政の役人達に何か恨みでもあるのだろうか。