いじめられっ子のハッピーエンドは和解ではない

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いじめられっ子のハッピーエンドは和解ではない。

このことを考えたのはタコピーの原罪が最終回を迎えてタイムラインが荒れていたころだったと思う。いじめられっ子といじめっ子という関係であったしずかちゃんとまりなちゃんが、タコピーがいなくなった世界では親友として中学校に通っているというラストで、タイムラインが荒れに荒れた。あれは3月末のことだったと思う。相変わらずせせらぎさんは筆が遅いというかなんというか。

そして次には『タコピー』の元ネタであろう『ドラえもん』のことを考えた。ドラえもんでものび太結婚前夜スネ夫ジャイアン出木杉と4人で酒を酌み交わしている。やはりいじめられっ子といじめっ子が未来では和解している。

しかし現実において、いじめられっ子のハッピーエンドは、和解ではないだろう。僕は大学時代、コンビニでバイトをしていた。小学校時代のいじめっ子が来店して、そのときは内心終始ビクビクしていたのを今でも覚えている。結局僕は彼を接客することはなかったのでよかったが。いじめられっ子にとってのハッピーエンドは、和解などではない。いじめっ子と全く関わりのない他人になって、今後も関わることが絶対にないと保証されることではないだろうか。その後はいじめっ子が、酷い目に遭おうが、幸せになろうが、どちらでも構わない。ただ今後の僕の人生に関わらなければいい。少なくとも僕はそう考えていた。僕が地元青森を離れて横浜に出てきた理由の一つでもある。

先述した漫画で、いじめられっ子といじめっ子が未来で一緒にいるのは、メタ的な理由だろう。『タコピー』については、明らかに2人の関係性が変わった事を表現するためにああいう表現をしたのだろうとわかる。現実的ではないかもしれないが、タコピーのおかげでこれだけ変化があったよという演出である。ドラえもんについては、キャラクターが彼らしかいないからである。例えば結婚前夜の男連中だけの飲み会に、いきなり「のび太の高校時代の友人」とかをだされても、読者は意味がわからないのである。だから、読者にもわかりやすくするためにいじめっ子をいじめられっ子と一緒に出している。メタ的な理由である。

だがしかし、漫画で不可解な展開を「メタ的な理由」で納得していてはつまらない。ちゃんとした理由を、こじつけなければならない。でも『タコピー』に関しては、並行世界を越えて保たれたタコピー関連の記憶が、二人を強く結びつけてしまったと、そういう解釈にするしかない。『ドラえもん』については、実はのび太の側からジャイスネに積極的に遊びに誘ったりすることもある。もしかしたらそこまで深刻ないじめというわけではないのかもしれない。ジャイアンスネ夫は、普段はのび太をいじめている。しかしのび太が隣町のガキ大将にいじめられたときは、なんと助太刀に入っている。大長編ではない日常回でも、実はそう言う話がある。

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こういったことから、のび太ジャイアンスネ夫は、読者が考えているほど険悪な仲というわけではないのかもしれない。…さすがに無理があるか?

まあドラえもんのいじめとタコピーのいじめはまた種類というか属性が違うような気がする。しかもタコピー最終話の2人の会話から察するにいじめの原因となった家庭の事情はどうやら解決されていないようである。考えれば考えるほどご都合主義だったので、そのうちせせらぎは考えるのをやめた。まあ少なくともあの最終話で、読者の半分…いや4割くらいは納得していた印象があるので、多分あれでよかったのだと思う。

多分だけどいじめを受けた経験がある人がクリエイターになったら、いじめを題材にした物語を作ったりしないと思う。だから、作り話の中では、いつまでもいじめられっ子といじめっ子の和解がハッピーエンドにされてしまうのかな、と思った。