2023年6月24日に、上野の森美術館で開催されていた「恐竜図鑑展」に行ってきた。
この展覧会は、学術的な観点ではなく美術的な観点から恐竜の復元図の歴史を辿ろう!という趣旨のものである。恐竜関連の展示ながら、化石の類の展示は、一切ない。
恐竜復元の歴史とは何か?つまり恐竜の研究の歴史である。発見された化石と、それを元に描かれた復元図。昔に描かれた恐竜のイラストは、どこか怪物のように見える。
初期の恐竜というのは、巨大の体の一部しかわからない未知の存在だった。そのため宗教画の悪魔やドラゴンを描き慣れた絵師が、復元図を描くことが多かったという。
研究により恐竜に対しての理解度、解像度が上がると、復元図はより現実の生き物らしくなっていく。
また、恐竜の種類によっては、研究が進むにつれ復元自体が丸々変わってしまうことも多々ある。今回の展示の例でいうと、みんな大好きイグアノドン。
この恐竜については研究史の最初期に発見されたということもあり(※恐竜時代の初期という意味ではない)復元の変遷が事細かに残されている。
まず1825年、イギリスでイグアノドンの歯の化石だけがみつかったときの復元がこちら。
四足歩行しており、全長は70メートルあったとか…。
しかし1878年にイグアノドンの全身骨格の化石が大量に見つかった。それを受けて全長は8〜9メートルとされ、正確な姿に近づいた。しかし現生動物のカンガルーを参考にしたため、いわゆるゴジラ立ちの復元となる。
次の転機は20世紀。1969年にデイノニクスが記載されると、ゴジラ立ちの復元だったすべての恐竜たちは昨今の水平スタイルへと修正された。イグアノドンも例外ではない。2000年代には、普通は四つ足で歩き、高いところの木の枝を食べる時などは二足で立つこともある、という描かれ方をされるようになった。
でもこの展覧会に期待していたものは、恐竜ルネサンス以前の、尻尾を引きずったゴジラ立ちの復元図であった。
そういう絵画をたくさん見ることができたので、見に行って良かったと思う。
このように現代的な復元図と見比べることができたのも良かった。