【フォルスラコス】かつての支配者は、支配者に戻ろうとした【恐鳥類】

6600万年前、地上の支配者たる恐竜たちは、巨大隕石が地球に落下したことにより、滅びたとされている。

現生の鳥類たちは、その末裔であるとされる。

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しかし、隕石落下後の世界で、かつての栄華を取り戻さんとばかりに、身体を巨大化させた鳥たちがいた。

その中のひとつが、フォルスラコス(Phorusrhacos)である。

これから、「ディメトロドン」の話をしよう - 宵闇林檎〜中身ゆるゆるブログ〜

フォルスラコスは、4500万年前の新生代に現在の南アメリカに生息していた。

現生のノガンモドキという種類に近い、鳥の仲間である。恐竜ではない。

恐竜ではないが、かつての地上の支配者であった恐竜たちの末裔である鳥類が、再び支配者となるべく巨大化した。

足元から頭頂までの高さは2.5メートルあったとされる。

また時速50〜70kmで走ることができたという。

翼は退化して飛行能力は失われていた。

太い脚と太い首を持ち、頭の骨は長さが60cmあった。

鋭い嘴を持っており、この嘴を獲物の頭上から振り下ろし、一撃で仕留めたとされる。

フォルスラコスが生息していた時代には、哺乳類はまだ体が小さかった。

例として、この時代にはヒラコテリウム(Hyracotherium)やメソヒップス(Mesohippus)といった後にウマとなる生き物がすでに出現していた。

この動物たちは、頭頂までの高さが50cmくらいまでしかなかった。

そんな時期に、時速50kmで追いかけて、2メートルの高さから嘴を振り下ろされたら、ウマの祖先たちはなすすべもなくフォルスラコスの餌食になっただろう。

そんなフォルスラコスも、やがて大型化した哺乳類と、ライバルとしてのネコ科の肉食獣に敵わなくなり、数を減らしていったという。

ネコ科というのはしなやかな肢体からのハイジャンプが特徴的な優秀な狩人である。

フォルスラコスはパワーでは優れていたが、ネコ科動物の俊敏性には敵わなかった。

フォルスラコスの優位性というのは、体格差をいかした攻撃にあった。

ウマ科の動物も、徐々に大型化してきたのだ。

フォルスラコスは、いくら恐竜の末裔とはいえ、一度小型化し、飛行することに特化した身体である。

再び巨大化したとしても、サイズの限界があった。

そしてこの頃になると、人類も狩人としてのライバル、そして自身の身を脅かす敵として台頭してきた。

やがて大型のフォルスラコスは、生活圏を維持できなくなり、絶滅したとされる。

というわかりやすいストーリーがあれば良いのだが、実際なぜ滅びたのかはよくわかっていない。

化石によれば、大型肉食獣とも、人類とも、地域によっては共存していたとされる。

何か化石記録だけではわからない小さな変化が起こったと考えられる。

そういったときに、大型の動物の方が影響を受けやすいらしい。

というわけで、このフォルスラコスもまた、謎に満ちた古生物の一つであった。

 

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これから、「ディメトロドン」の話をしよう

 

前回「ディプロカウルス」の話をしたので、次はやはり「ディメトロドン」の話をしなければならないだろう。

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前回→【ブーメラン】ディプロカウルスをご存知ですか?【ブーメラン】 - 宵闇林檎〜中身ゆるゆるブログ〜

前々回→さあ、おまえのツノを数えろ! - 宵闇林檎〜中身ゆるゆるブログ〜


ディメトロドン(Dimetrodon)」は1878年アメリカのエドワード・コープにより記載された。

ここでいう「記載」とは「ある生物の分類群を定義する際、その主要な形質をすべて記述したもの」(https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E8%A8%98%E8%BC%89/ より)という意味である。

ディメトロドンは、2億7000万年前である古生代ペルム紀に生息していたとされる。

4つ足で歩くトカゲのような格好をしているが、最大の特徴は背中にある大きな背鰭である。

この背鰭は、朝の日差しを浴びてすばやく体温を上げるために役立ったとされる。

ディメトロドンは数種類いるが、体長は大きいもので3メートル以上あるとされている。

ペルム紀において、食物連鎖の頂点にいたと考えられている。

ティラノサウルスアノマロカリスのように、当時最強の捕食者だった。

ディメトロドンは、単弓類のうちの盤竜類と呼ばれる生き物の化石である。恐竜ではない。

単弓類、盤竜類とは一体なんなのか?

両生類なのか?爬虫類なのか?

それとも哺乳類なのか?

書く側としてもはっきり書きたいのだが、はっきり書けない。

そして現代の尺度では、はっきり分類できないことこそが、単弓類の魅力の一つだと考えている。

テトラケラトプスのときに、少し獣弓類の話をした。獣弓類とは単弓類のうちの進化した仲間である。

獣弓類の中の生き残りが、現在の哺乳類とされている。

単弓類のうちの、現在の哺乳類と繋がらない生き物が、盤竜類である。

ディメトロドンは、両生類とも爬虫類とも、厳密に言えば哺乳類とも違う。

現在の生物分類では何であるとはっきりといえない生き物といえるだろう。

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それでは、ディメトロドンと我々の共通点とは何だろうか?

ディメトロドンとは、「二つの異なる歯」という意味である。

あの立派な背鰭が、命名においてまったく触れられていないのは驚きなのだが。

ディメトロドンは、2億7000万年前の時点で異歯性を獲得していた。

異歯性、つまり形が違う歯があるということである。

人間は32本ある歯の形がほぼ全て違うので、当たり前だと思いがちだが、

実は違う形の歯を数種類持つというのは、現代では哺乳類だけが持つ特徴である。

例えば爬虫類であるイリエワニは、歯が80本ほど生えているとされるが、全て同じ形をしている。

ディメトロドンは、2種類の歯を持っている。それがやがて、何種類もの歯を持つ哺乳類へと繋がっていく。

ディメトロドンは、あんな姿をしているが、われわれ哺乳類の祖先の試行錯誤の形の一つであるということだ。

 

2015年上野科博「生命大躍進」展におけるディメトロドンの展示。

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【ブーメラン】ディプロカウルスをご存知ですか?【ブーメラン】

 


前回ツノがある古生物について書いてみたわけだが、それに関連して、頭部が特徴的なディプロカウルスという化石がある。

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前回→さあ、おまえのツノを数えろ! - 宵闇林檎〜中身ゆるゆるブログ〜

 

ディプロカウルス(Diplocaulus)というのは、3億年前のペルム紀の頃に生息していた両生類の化石だとされている。

恐竜ではない。

ついでにいうと現代においてディプロカウルスの直接的な子孫は残っていない。

基本的には現生のオオサンショウウオに近いフォルムをしているが、

最大の特徴は、頭骨がブーメランのような形になっているということである。

頭骨は大型化しているが、下顎は普通のサイズだという。噛む力はあまり強くはなかったと推測されている。

また、頭だけではなく身体全体が平たく、脚も弱々しい。

そのため、一生のほとんど水中で過ごしていたであろうとされている。

それにしても、ディプロカウルスは何故このような頭の形になってしまったのか。

ディプロカウルスは、既に滅びてしまっている。現生動物のように生活を観察するということができない。

このような時は、化石そのものから推測、または現生動物から似たような事例を探すしかない。

例えば、当時の捕食者に丸呑みにされても、この頭のおかげで、飲み込まれずに助かることが多かったのかもしれない。

或いは、頭が尖っているオスがメスにモテたのかもしれない。

また、頭骨の形が、浮力を生み出す形をしていて、前に進むだけで水面に上がることができたと推測されている。

このブーメランのような形の頭骨で、キャラクター性は恐竜達に負けず劣らず、むしろ抜群のはずである。しかし、悲しいかなイマイチ一般的な知名度が薄い。

それでも古代生物ファンの間ではよく知られている。

ポケットモンスターの、ドラメシヤ/ドロンチ/ドラパルトのモチーフの一つだと言われている。

またディプロカウルスをモデルにしたゾイドがあったり、

復元モデルがお菓子のおまけとしてフィギュアがラインナップされたこともある。

SFCソフト「46億年物語」では第2章の敵キャラとして登場するが、ブーメランというよりはV字型の頭をしていて、なんか違う。

ディプロカウルスといえば、有名な写真がある。

茶色のディプロカウルスが、タライに入った写真を、見たことはないだろうか?

実はあの写真は、日本のとある模型愛好家が1992年に雑誌に投稿する目的で作ったそうだ。

しかし2004年のヨーロッパの新聞でこの写真が取り上げられ、「このハンマーヘッドサラマンダーは実在するのか?」「古代生物の生き残りか?」などと一種のUMA騒ぎになったらしい。

そんなディプロカウルスだが、実はブーメラン頭の後ろから皮膜が伸びていたとする説があり、

生きていた頃はブーメラン頭はあまり目立たなかったのではないかとする説もある。

僕自身この復元図は最近知ったので、イメージが変わるなぁと思ってしまった。

また、皮膜が控えめな復元図もあり、せめてこのくらいであってほしいというのが正直なところである。

 

参考:

http://www.interq.or.jp/sun/mm-kas/ichgon27.htm

https://blog.goo.ne.jp/robotsindisgize1985/e/1aec68713402f6acaaf4950c3ca5b790

https://zukan.pokemon.co.jp/detail/887

https://muuseo.com/akira.44mag/items/837

さあ、おまえのツノを数えろ!

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この前何気なくインターネットで古代生物のことを調べていたら、「テトラケラトプス」という化石のことに書かれた記事を見つけた。テトラといえばギリシャ語やラテン語で4を表す言葉である。テトラケラトプスは、直訳すると、「4本ツノの顔」という意味になる。テトラケラトプスとは、一体どんな化石なのだろうか。


 

トリケラトプス(Triceratops)は言わずもがな有名である。白亜紀後期に生息していた植物食の恐竜で、4本足で歩き顔には名前の通り3本ツノが生えている。両目の上に1本ずつと、鼻の上から1本で、3本である。口はクチバシのようになっていて、後頭部は大きな一つのフリル状になり首を守るような形になっている。映画や特撮でも登場回数が多いメジャーな恐竜のひとつである。

ペンタケラトプス (Pentaceratops) というのもいる。生息域はトリケラトプスと近いが、時代が離れている。トリケラトプスは6600万年前地球に隕石が衝突したその時まで生きていたようだ。いっぽうのペンタケラトプスは、7600万年前から7300万年前に生息していたとされる。トリケラトプスよりもふるい恐竜ということになる。ペンタといえば5を意味する。ペンタケラトプスは、顔には3本のツノが生えていて、両頬の辺りから突起が1本ずつ生えている。これをツノに見立てて、5本ツノというわけだ。

それでは、テトラケラトプス(Tetraceratops) とは、どのような化石なのか。なんか表現が回りくどいので、勘のいい読者の皆様ならお気づきだとは思うが、このテトラケラトプス、恐竜ではない。2億6000万年ほど前に生息していたとされる、獣弓類の仲間である。獣弓類というのは、ゆくゆくは哺乳類になるトカゲっぽい生き物のことで、恐竜ではない。さまざまに進化した獣弓類の唯一の生き残りが、現在の哺乳類であるとされる。テトラケラトプスは、頭の骨の化石しか見つかっていない。身体の一部しか見つかっていないというのは、古代の化石生物では珍しいことではない。テトラケラトプスは、鼻の上にツノが横に2本並んでいて、後は両目の上に1本ずつ、実は両頬からも突起が下に向かって伸びている。頭しか見つかっていないが、ほかの獣弓類を参考に、4つ足のトカゲのような姿で復元されている。

といった感じで、3本ツノ、4本ツノ、5本ツノの古代生物を調べてみた。現代においてもカメレオンやサイチョウなど恐竜以外の双弓類でもツノを持つものはいる。さらに哺乳類でもウシやシカ、サイなどがツノを持っていたり、昆虫のカブトムシやツノゼミなんかも面白い形のツノを持っている。古代生物は特徴的な身体の部品がピックアップされることが多いが、現生動物で似た特徴を持つ動物を探し比較していくことで古代生物も理解することができることだろう。

 

ポケモン化石博物館に行ってきた!

2022年5月25日に東京都台東区上野にある国立科学博物館で行われている「ポケモン化石博物館」に行ってきた!

 

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博物館へは一人で行け - 宵闇林檎〜中身ゆるゆるブログ〜

↑この時以来の上野科博で、ちょー楽しかった。

 

それでは見ていきましょう。

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こちらが入り口である。

 

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ピカチュウプテラがお出迎え。


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かいのカセキの模型。けっこうデカい。


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かいのカセキから復元されたオムナイト


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こちらは現実世界で化石を探すときに使う道具たち。


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オムナイトの元ネタの一つである古代生物、アンモナイトの復元予想模型。


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オムナイトの進化系のオムスター


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サイコとりポケモン(違う)アーケンの骨格予想模型。

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アーケンの元ネタのアーケオプテリクス。


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カブトプスの骨格(?)模型。


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チゴラス


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トリデプス


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ガチゴラスはガチ。

ただゲームキャラクターの等身大模型があるだけならただの楽しい催し物だが、そこは博物館で行われている学術的な展示なので…

 

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古生物学とは何か?

 

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ポケモンの「しんか」と生物学的な進化の違い。

このような感じでポケモンしか知らない人が現実の進化を勘違いしてしまわないような配慮もあった。

しかし隙あらばセパルトラをぶっ込んでくるな公式は。

 

しかしやはりこの展示のキモは、現実世界に再現されたポケモンやカセキの模型である。こんな企画展ができるのも、ポケモンが現実世界にいた生き物をモチーフにしたキャラクターが多いからである。

ただキャラクターを集めさせるなら、全部のポケモンを草むらや洞窟に置けばよいだけである。ポケモンのコンセプトの一つは「ウルトラ怪獣」だから図鑑にはポケモンの能力を示すための"数字"がやたらと出てくる。種族値のことではなく、吐く炎の温度だとか、走るスピードが時速いくつだとか、そういうやつである。もう一つのコンセプトは「昆虫採集」だから現実にいる生き物をモチーフにしたキャラクターが多いし、図鑑完成まで適度に手間がかかる仕掛けがあちこちに施されている。カセキの復元もその仕掛けの一つなのだろう。

 

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はねのカセキ。


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ふたのカセキ。


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こうらポケモンのカブト。


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こうらのカセキ。


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アノプス


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リリーラ


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ねっこのカセキ。


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ジーランスシーラカンスを比較!!

 

おわり。

 

個人的にはポケモンみたいなデフォルメされたキャラクターがそのまま3メートルくらいあったり骨格模型になったりしてしまうのは何か違うかなーとは思っていた。しかし実物大のポケモンの模型が置いてあるだけで楽しいので、ポケモンが好きなら是非見に行ってほしい。見に行ってほしい、しかし…御多分に洩れずこのイベントにも新型コロナ対策で入場制限がかかり、予約制であり、5月25日現在において上野科博会期においてのチケットは完売だそうである。しかし諦めないでほしい。この展示は巡回展である。もし行きたい人は、これから先に開催される名古屋や大分の博物館に行くと良いだろう。

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上野科博にはポケふたがある。こちらもお見逃しなく。

ポケモンマンホール『ポケふた』

巡回展「ポケモン化石博物館」Pokémon Fossil Museum - 国立科学博物館

【読書メモ】恐竜学者は止まらない!【止まるんじゃねぇぞ…】

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#読書 #恐竜 #子ども科学電話相談


『恐竜学者は止まらない!読み解け、卵化石ミステリー』

田中康平

創元社

2021年8月20日第1版

 

田中康平氏といえば、ラジオ番組「子ども科学電話相談」の回答者の一人として認識している。しかしその実、恐竜の卵化石研究におけるオーソリティー、第一人者である。恐竜ガチ勢キッズ達に厳しいスパーリングを仕掛ける“ダイナソー小林”の弟子として、子どもたちに優しく寄り添う“ウーリサス田中”。(小林先生も最近はずいぶん丸くはなったが)彼が学生時代から、どのようにして今の恐竜研究者の地位へ昇り詰めたのかが、本書には詳細に記されている。また恐竜の研究のために、あちこちの国へ行きたくさんの人と関わっていることが、よくわかる。また、恐竜の研究をするためには、すべての授業の成績が良くなければいけない。その辺りは、いま中学生や高校生の人が将来恐竜学者になるために参考になる部分もたくさんあるだろう。この辺りは前に読んだ『キリン解剖記』に似ているところがある。

【読書メモ】キリン解剖記【小田原は都心】 - 宵闇林檎〜中身ゆるゆるブログ〜

一方で、夢破れて恐竜とは縁遠い仕事をしているただの恐竜好きのおじさんの僕としては、本書に記されている研究過程や研究結果といった、恐竜についての新たな知識の方が価値があると考えている。以下は感想というよりは、本書を軽くまとめたような形になることをお許しください。

まず抑えるべきは、「卵化石にも学名がつく」という点だ。現生動物の卵であれば、親が産む瞬間を見れば「これはニワトリの卵だ!」ということができる。ニワトリに限らず、どの生き物がどんな卵を産むか大体わかっているので、卵だけを見ても、丸さや模様などで判別できそうだ。しかし卵の化石の場合、近くに親の化石がなければ、何の卵かはわからないという。そのため卵化石自体に、骨化石とは別に学名が付けられる。

ここから研究内容は、恐竜は現生鳥類のように抱卵、つまり卵を抱いて温めたのか(オープンな巣)それとも現生のワニやカメのように、穴を掘って卵を産み埋めたのか(埋蔵型の巣)どちらなのかということを突き止める方向に進んでいく。論文を読み進めるうちに「ガスコンダクタンツ」という謎の単語に突き当たる。これは「ガス」つまり気体の通りやすさを表した値だという。つまり卵の殻に孔が開いていてスカスカなのか、それとも密なのかという意味だそうだ。ちなみにニワトリの卵にはおよそ12000個の孔が開いているらしい。孔がたくさん開いている卵なら、埋められる卵で、孔が少ない卵はオープンな巣に産み付けられたであろうという説が、既に出ていた。ガスコンダクタンツというのは、卵の重さから、蒸発した水分を計算するものであり、生の卵でなければ調べられないという。つまり恐竜の研究には応用できない。

だから田中氏は、恐竜の卵については卵殻の密度を表す「間隙率」という値を計算して、現生動物の卵のガスコンダクタンツと混ぜて研究に使おうとした。しかし生卵の重量で測定されたガスコンダクタンツと、同じ卵で計算によって導き出されたガスコンダクタンツは、一致しないという。さらにこの説は、ガスコンダクタンツと巣の型式の因果関係が実は調査されていないことがわかった。田中氏は、世界中から現生動物や絶滅動物の卵殻を収集した。誇張ではなくアメリカ中国ヨーロッパを駆け回り、鳥からワニから卵殻を収集しており、その中には絶滅したリョコウバトの卵殻も含まれているというから驚きだ。そして「卵殻間隙率」を測りまくった。ちなみに「卵殻間隙率」でググると、WEBに公開された田中氏のガチの論文が出てくる。ネット上で論文が読めるなんて、いい時代だなと思う。そして恐竜の卵化石のうち、親がわかっている卵化石の卵殻間隙率も測り、両者を照らし合わせると、どの恐竜が抱卵したのかあるいは卵を埋めたのかがわかるという寸法だった。しかしまだ確定ではない。現生動物では「見ればわかる」ことであっても、恐竜がそうだったと証明するのは難しい。そこが面白さでもあるという。

田中氏はこの後も、中国で酒を大量に飲まされながらも一期一会の標本との付き合い方に悩まされたり、ダイナソー小林氏をアゴで使ったり(違う)しながら、今度は恐竜が巣を作った場所の研究を進めていく。クラッチ化石と呼ばれる、卵と巣が一体となった化石を調べることで「地熱を使って卵を温めた恐竜」「枯れ草の発酵熱で卵を温めた恐竜」「親が放卵した恐竜」が推測できるという。

これは『キリン解剖記』のときと同じ感想になってしまうが、歳が近い(1985年生まれだという)田中氏が羨ましい。もしやりたいことがある若い人は、夢をあきらめないで突き進んでほしい。学校の勉強は絶対に無駄にはならないのだ。

恐竜の名前はなぜ長いカタカナなのか

 

 

※素人がテキトーに書き殴った文章です。ちゃんと知りたい人は調べてください。

 

みなさんは恐竜のことは好きだろうか。僕は大好きなのだが、恐竜のことはよくわからないという人も多いだろう。よくわからない理由の一つに、恐竜の名前はすべてよくわからないカタカナであるから、というのがあると思う。

ティラノサウルス」や「トリケラトプス」くらいならまだなんとかなる。「ヴェロキラプトル」や「ディプロドクス」「パキケファロサウルス」あたりになるとちょっと怪しい。「エウオプロケファルス」「オピストコエリカウディア」あたりはもう慣れていないと舌を噛みそうである。

翼竜や首長竜を「恐竜」と呼んでもいいんじゃないか? - 宵闇林檎〜中身ゆるゆるブログ〜

 

この世で発見された生物には「学名」が付けられている。学名とは、論文を書くときなどに使われる、世界共通の呼び方である。学名はラテン語でつけられる。発見された生物には学名がついている。また生物には「標準和名」という名前もついている。現生の生物を普通に呼んだり図鑑に表すときなどにはこの標準和名を使う。標準和名は日本だけで通じる名前で、日本人が慣れ親しんできた習慣的な名前である。つまり昔からみんながその生物をその名前で呼んできた名前である。学名と比べると通称みたいなものだ。だから、短くて、わかりやすい。日本語で「イヌ」と呼ばれ、英語で「dog」と呼ばれる生き物の学名は「カニス・ルプス・ファミリアーリス」と言う。慣れ親しんでいる身近な生き物たちにも、わけがわからない長い名前がついている。

恐竜は、化石しかないが、一応現代においては、人類史以前に絶滅した動物ということになっている。つまり誰も見たことがない動物ということである。ではなぜ恐竜の名前はすべてよくわからないカタカナであるのか?それは、「生きている恐竜を実際に見た人が誰も居ないから」である。先程の「イヌ」なら、昔からイヌのことをイヌと呼び親しんで一緒に生活してきた。ある地域ではイヌ、ある地域ではドッグと呼ばれていた生き物に対して、研究者が後からカニスルプスファミリアーニスという名前をつけた。では恐竜はどうか。恐竜は、先述の通り化石しかない。だから普通の生き物とは逆で、先に研究者が研究して名前をつける。そして一般人が新たに通称をつけることがない。日本は、アルファベット言語ではないので、アルファベットで書かれたラテン語をカタカナに直す時に表記ブレができたりするが、恐竜は、「学名しかない」状態となる。恐竜以外にも、シーラカンスという魚は、先に化石が見つかっていたため、現代に生きていてもシーラカンスがそのまま通称になっている。

 

もしもティラノサウルスが現代に生きていたら…まあ進化して別の風貌になっているかもしれないし、そもそも恐竜が絶滅しなかったら人類は生まれていないかもしれないがそれは置いておくとして。もしもティラノサウルスが現代に生きていたら、たとえば「テナシオオオニトカゲ」とかそういう名前になっていたかもしれない。あるいはティラノサウルスそのものを表す新しい単語が生まれていたかもしれない。